「桐子の書斎」 [ひとりごと]
「いいね」「いいね〜」身を乗り出して、木彫を眺める豪快な桐子さんは、私の昔からの患者さんである。
今から3年くらい前、診療台に座るなり、目の前の木彫を指し、あれは何?と聞いて来た。私が彫っていることを伝えると、えらくビックリされ、危うくユニットから転げ落ちそうになった。その時から、いいね、いいね〜が聞かれるようになった。それまでは私にとっての、いつもの患者さんが、その日を境に昔からの患者さんになった。昔からの患者さんとは、気のおけない患者さんということである。
この時、この方が、俳人であることを知った。
「水中花傘寿の三島由紀夫笑ふ」
句や、立ち居振舞い、喋り方から男っぽい方だと思っていたが、「桐子の書斎」で見せる顔は、艶っぽく、色香を感じさせる。
「沈丁花いつかあなたの根の土に」
それでも、活動的で東京の好きな彼女。
「ゴリラ見てあとは上野の心太」
昨年末、いろいろ考えて、転居しようかと思っています、と寂しそうにポツリ...
そして、引越話はあっという間に話ではなくなり、都会が大好きだった桐子さんは故郷の近くへ帰って行きました。
「たつしやでな伝言板の大旦」
「去るものは去り俎の葱二本」
それでも、彼女は、よく(笑)っているようです。
泣きの涙を笑いの涙に隠れさせ..
「山眠るひとが一人になる真昼」
多分こうした静寂の中で「書斎」にいる桐子さんは、戸惑いながらも、さらさらと筆を走らせているのでしょう。
私も「普段着の神々」を休日以外埋め続けることで、同じ日々でも違った毎日を過ごすことにしました。桐子さんが私に引越の話をしたあたりから、そして「桐子の書斎」に私の木彫を飾っていただける間は....
「生涯のあらかたは終へ大くさめ」
いろはにほへとちりぬるを..........
いえいえまだまだ、これからも穏やかに、そして艶やかに、四季を詠み続けて下さい
count 1166
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2009-02-20 04:57
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コメント(1)
グー
by 司 (2009-02-20 15:46)